今回は、映像化されている過去の作品から、初心者の方にも楽しんで頂けるオススメ作品を《別箱公演編》としてご紹介いたします。
別箱で上演される作品
まずはじめに、“別箱公演”とは専用劇場以外の劇場での公演のことを指し、本公演の合間の期間に上演されるサブ公演のことです。
別箱公演で上演される作品は、お芝居が主体のものなど、中小劇場ならではの規模の大きさを生かした作品が多くなっています。
大劇場よりも舞台への距離が近いため、手に取るように伝わってくるような臨場感のあるお芝居を味わうことができるのも醍醐味。
今回は、宝塚ファンの中でも人気の別箱公演から、初心者でも楽しめる作品をご紹介いたします。
別箱公演については、下記の記事で詳しくご紹介しています。
オススメ作品《別箱公演編》
『月雲の皇子』
『月雲の皇子』は、2013年にバウホール公演にて月組により上演されました。
大好評を博したため、約半年後に東京特別公演として再演もされました。
作・演出を手掛けたのは、本作がバウホールデビュー作となる上田久美子先生。
題材となったのは、古事記や日本書紀に残る大恋愛叙事詩の「衣通姫伝説」。
美貌の皇子と皇女が禁じられた恋に落ち、やがて歴史の暗雲に覆われ流刑の地で心中したという悲しい物語を美しく描いた作品です。
歌を愛し民を慈しむ心優しい兄・木梨軽皇子(珠城りょう)と、武芸に秀で冷徹な政治感覚を持つ弟・穴穂皇子(鳳月杏)。
二人の皇子には、衣通姫(咲妃みゆ)と呼ばれる血の繋がらない美しい妹がいました。
幼い頃はよく遊んでいた三人でしたが、衣通姫は巫女になるため兄弟と離れ山で暮らすことに。
その数年後、美しく成長した衣通姫と二人の皇子は再会し、三人の胸にはざわめきがよぎります。
神聖な三輪山の巫女が、男性と交流することは許されません。
仲を疑われた木梨軽皇子は流刑の身となり、弟である穴穂皇子に皇位継承を奪われます。
衣通姫は穴穂皇子の后となりますが、心に想っていたのは木梨軽皇子。
彼を追い、地の果てで再会した木梨軽皇子にかつての優しい面影はなく、心を閉ざした復習心を燃やす人間に変貌していました。
歴史の大きな流れに呑まれ翻弄された人々の思いを、現代的な感覚で描き出した切ない物語となっています。
『ドン・ジュアン』
『ドン・ジュアン』は、2016年にKAAT神奈川芸術劇場公演にて雪組により上演されました。
原作は、モリエールの戯曲やモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」等で知られる「ドン・ジュアン伝説」。
2004年にミュージカル化され、カナダにて初演されました。
フラメンコをベースにした情熱あふれる名曲と共に、大好評を博してきた作品です。
宝塚版となる本作の潤色・演出は、生田大和先生。
稀代のプレイボーイが騎士団長を刺殺した事を切っ掛けに、愛の呪いに苦しめられながらも心から愛する女性と出逢うことで真実の愛に辿り着くという物語です。
女と酒、そして快楽を求め続けてきたドン・ジュアン(望海風斗)。
ある晩、いつものように愉しんでいたところ、遊び相手の女の父である騎士団長の怒りに触れ、決闘することに。
ドン・ジュアンが勝利を収めますが、騎士団長が遺した「いつか“愛”がお前への罰になるだろう」という言葉が呪いのように付きまとうようになります。
しかし呪いなど微塵も気にすることなく快楽を貪り続けるドン・ジュアンには、唯一の理解者である友人ドン・カルロ(彩風咲奈)の言葉も届きません。
ところがある日、運命に導かれるように彫刻家の娘・マリア(彩みちる)と出逢います。
マリアを愛することで本当の愛を知ると共に、“愛の呪い”に苦しめられるように・・・
本当の愛とは何かを知り内面が変化していく様子を、色気たっぷりに演じる望海風斗さんのお芝居と高い歌唱力に大満足させられる作品となっています。
『ロックオペラ モーツァルト』
『ロックオペラ モーツァルト』は、2019年に梅田芸術劇場・東京建物 Brillia HALL公演にて星組により上演されました。
2009年にフランスのパリで初演され、世界各地で上演されている人気ミュージカル。
日本では、2013年に初上演されました。
作曲は、『太陽王』『1789─バスティーユの恋人たち』『CASANOVA』など、宝塚でも上演された作品を多く手掛けて来たドーヴ・アチアさん。
潤色・演出は、石田昌也先生です。
音楽を愛し、恋と自由を追い求めた天才音楽家・モーツァルトの半生を、ドラマティックな楽曲と共に描いた作品です。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(礼真琴)は、幼い頃から神童ともてはやされ、誰もが羨む才能を手にしながらも自由を愛し、常に刺激を求めて生きていました。
ザルツブルグで宮廷音楽家としての職を得ていましたが、窮屈な宮廷での空気が合わず、外の世界で自由気ままに音楽を作りたいという夢を抱くようになります。
そんな時に訪れたパブで出会ったのは、コンスタンツェ(舞空瞳)という娘。
モーツァルトの素晴らしい演奏を目の当たりにしたコンスタンツェは、彼の才能に心を奪われます。
しかし、モーツァルトが恋に落ちたのはコンスタンツェの姉・アロイジア(小桜
ほのか)でした。
アロイジアの色香に溺れ、恋にのめり込むモーツァルトを案じた母アンナ・マリア(万里柚美)は、モーツァルトを演奏旅行へ連れ出します。
モーツァルトが演奏旅行に出掛けている間にアロイジアは別の人と結婚、モーツァルトはコンスタンツェと結婚します。
一方で、オーストリア宮廷で大活躍していた作曲家アントニオ・サリエリ(凪七瑠海)に出会います。
二人は互いの音楽に惹かれ合いながらも傷つけ合うという、犬猿の仲になっていくのでした。
サリエリは当時のウィーンで人気音楽家の一人として活躍していましたが、自分に無いものを持つモーツァルトの才能への憧れから嫉妬の闇へ。
その頃、愛する両親との永遠の別れにより孤独の底へと突き落とされたモーツァルトは、最期の作品とされているレクイエムの作曲に立ち向かいます。
光と影を表す、モーツァルトとサリエリの関係性。
そして、コンスタンツェとの出会いなど、モーツァルトの半生をドラマティックな楽曲と共に描く大人気ミュージカルです。
『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』
『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』は、2021年に梅田芸術劇場・東京国際フォーラム公演にて花組により上演されました。
2012年にブロードウェイにて初演され、トニー賞では10部門にノミネート。
「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」等で名を挙げる作曲家、ガーシュウィンの曲をフューチャーしたコメディミュージカルです。
本作は原田諒先生による潤色・演出により、宝塚歌劇バージョンとして公演されました。
舞台は禁酒法時代のニューヨーク。
お金持ちでプレイボーイのジミー・ウィンター(柚香光)は、4度目となる結婚前夜に、もぐり酒場で独身最後の夜を楽しんでいました。
友人やショーガール達と歌い踊り酔っ払ったジミーは、酒場の裏でボーイッシュな女性ビリー・ベンディックス(華優希)と出会います。
実はギャングの一味で酒の密売人という正体も知らず、ジミーはこれまで出会ったことの無いタイプであるビリーに惹かれます。
ビリーもまた、別世界に住むジミーに興味を持ち始めるのでした。
ビリーに気を許したジミーは、マンハッタンの郊外に別荘を所有していると口にしてしまいます。
絶対に使うことのないというその別荘を酒の隠し場所にしようと思い付いたビリーは、仕事仲間のクッキー(瀬戸かずや)らと共に別荘へ酒を運び込みます。
しかし、そこへフィアンセのアイリーン(永久輝せあ)と共に突然現れたジミー。
ビリーたちは、隠した大量の酒を見つけられないようにと、あの手この手を使って奮闘することに。
ガーシュインの名曲と共にテンポ良く進むストーリー、華やかで爽快なタップダンスも見どころ。
とにかくハッピーなアメリカンコメディなので、宝塚が初めての方にもオススメです!
『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』
『Hotel Svizra House ホテル スヴィッツラ ハウス』は、2021年に東京建物 Brillia HALL公演にて宙組により上演されました。
作・演出を手掛けたのは、植田景子先生です。
舞台は、スイスのリゾート地サン・モリッツにあるホテル スヴィッツラ ハウス。
戦時下という先行きの見えない日々を戦いながらも、愛する芸術を守ろうという熱い想いを胸に精一杯生きる人々の物語。
20世紀初頭のパリで華開いた、ロシアの伝説のバレエ団“バレエ・リュス”へのオマージュが散りばめられています。
時は第二次世界大戦中期、様々な人々が行き来していた中立国スイスにあるホテルスヴィッツラハウスには、戦火を逃れた富裕層が集っていました。
ロンドン駐在の外交官ロベルト・フォン・アムスベルク(真風涼帆)は、英国情報部の為に働くスパイキャッチャーとして敵国のスパイを摘発するという任務についていました。
ある重要なミッションを受け、サン・モリッツにやってきたロベルト。
ホテルで予定されていたロシアの亡命貴族が主催するチャリティ・バレエ公演で踊るためにやって来た、バレエダンサーのニーナ(潤花)と出会います。
バレエ・リュスのダンサーを母に持つロベルトとニーナはバレエを愛する者同士、互いに惹かれ合うように。
オーストリアの実業家で芸術家のパトロンでもあるヘルマン・クラウスナー(芹香斗亜)と、艶やかな未亡人アルマ(遥羽らら)との少し切ない大人の恋愛関係も見どころです。
この公演が上演されたのは、2021年4月。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言により、予定されていた梅田芸術劇場公演が全て中止となってしまい、無観客での配信が行われました。
そのような状況下で公演された本作は、戦時下という厳しい情勢の中で愛する芸術を必死に守ろうとする人々と、観劇が叶わなかった宝塚ファンの思いが重なるような公演となりました。
宝塚歌劇だけでなく、芸術を愛するすべての人の心に深く響く作品ではないかと思います。
『TOP HAT』
『TOP HAT』は、2015年に宙組により日本初演されました。
そして、2022年に梅田芸術劇場メインホール公演にて花組により再演されました。
1935年にアメリカにて映画が公開され、2011年にイギリスにてミュージカル化されて以来、世界中で愛されてきたミュージカル映画の代表作。
映画史上最高のダンシング・ペアとされる、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが共演しています。
宝塚版の脚本・演出は、齋藤吉正先生。
ブロードウェイダンサーのジェリー・トラヴァース(柚香光)は、ひょんなことから同じホテルに滞在するモデルのデイル・トレモント(星風まどか)と出会います。
一目惚れしたジェリーは、デイルに猛アピール。
一時は心を通じ合わせますが、ジェリーを友人の夫だと勘違いしたデイルは当てつけに他の男と結婚してしまいます。
当てつけに結婚された男とは、陽気なイタリア人デザイナーのアルベルト・ベディーニ(帆純まひろ)。
すれ違いにすれ違いを重ねた末に無事ハッピーエンドを迎えるという、とても楽しいストーリーです。
フレッド・アステアを彷彿とさせる、柚香光さんの軽やかで表情豊かなタップダンスにも注目!
まとめ
別箱公演で上演される作品は、お芝居が主体のものなど、中小劇場ならではの規模の大きさを生かした作品が多くなっています。
本公演同様に宝塚オリジナル作品から海外ミュージカルまで、様々な種類の作品が公演されています。
今回は、宝塚ファンの中でも人気の別箱公演から、初心者でも楽しめる作品をご紹介いたしました。
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