今回は、映像化されている過去の作品から、初心者の方にも楽しんで頂けるオススメ作品を《マンガ原作編》としてご紹介いたします。
宝塚歌劇とマンガとの親和性
宝塚歌劇では、『ベルサイユのばら』を筆頭に、少年少女マンガを舞台化した作品が多く上演されてきました。
宝塚歌劇をあまり知らない方の中には、「宝塚といえばベルばら」というイメージを持っている方も多いようです。
しかし近年では、『はいからさんが通る』や『メイちゃんの執事』、『花より男子』などの大人気マンガも上演されています。
少女マンガに留まらず、少年マンガの『ルパン三世』や『るろうに剣心』、『シティーハンター』の舞台化も話題になりました。
宝塚歌劇の特徴のひとつとして、女性が憧れる男性像を体現した男役、その男役に見合うような女性性を追求した娘役を演じるという点があります。
そのため、宝塚歌劇による舞台化であれば、少年少女マンガとの親和性が高くなるのも必然ではないでしょうか。
宝塚歌劇がマンガを舞台化する上での大きな魅力は、原作に近いビジュアルを体現できること。
さらには、マンガの世界観を壊さず、新たな作品として創ることができる点です。
今回は、宝塚ファンの中でも人気のマンガ原作の作品から、初心者でも楽しめる作品をご紹介いたします。
オススメ作品《マンガ原作編》
『ルパン三世』
『ルパン三世』は、モンキー・パンチさんによる少年漫画。
1967年に「漫画アクション」にて連載がスタートし、1971年にテレビアニメ化されて以来、世代を超えて愛されてきました。
宝塚歌劇による初の舞台化として、2015年に本公演にて雪組により上演されました。
脚本・演出は、小柳奈穂子先生です。
マリー・アントワネットの時代のフランスを舞台に、ルパン一味がタイムスリップしてしまったというファンタジー要素あふれる物語。
時は現代、ベルサイユ宮殿で行われている“マリー・アントワネットの首飾り”の展覧会に、ルパン三世(早霧せいな)一行が出没。
ルパンたちが首飾りを盗もうとした瞬間、フランス革命前夜の時代へタイムスリップしてしまいます。
現代へ戻るための手掛かりを得ようとするルパンたちは、カリオストロ伯爵(望海風斗)という錬金術師に出会います。
そこで、ハプスブルク家の秘宝“マリアの涙”が現代へ戻る鍵となることを知ります。
マリアの涙を手に入れるためにマリー・アントワネット(咲妃みゆ)に近づきますが、自分に正直に生きるマリーに惹かれ、マリーもまた自由奔放なルパンに惹かれて行きます。
宝塚歌劇に度々登場するマリー・アントワネットの時代に、ルパン一味を巻き込むことで、双方の世界観を上手く融合させた作品。
シンプルで分かりやすく前向きな気持ちになるようなストーリーなので、気軽に観たい時やお子様にもオススメです!
『ポーの一族』
『ポーの一族』は、1972年に「別冊少女コミック」にて連載がスタートした、萩尾望都さんによる少女漫画。
宝塚歌劇による初の舞台化として、2018年に本公演にて花組により上演されました。
「『ポーの一族』をミュージカル化したいと夢見て宝塚歌劇団に入団した」という演出家の小池修一郎先生が、1985年に原作者である萩尾望都さんに上演を申し出て以来、遂に実現することとなりました。
永遠の命を持つ吸血鬼・バンパネラ一族が、命が絶える事のない苦しみを抱えながら旅を続けて行くというファンタジー作品。
イギリスの片田舎に捨てられたエドガー・ポーツネル(明日海りお)は、妹のメリーベル(華優希)と共に拾われたハンナ・ポー(高翔みず希)によって育てられます。
ある時、エドガーは育てられた一族がバンパネラ(吸血鬼)の集団であることを知ってしまいますが、自身が一族に加わることを条件にメリーベルを逃がします。
それから数年後、そのことを知ったメリーベルもまた自ら一族に加わることに。
一族の代表であるポーツネル男爵(瀬戸かずや)やその妻シーラ(仙名彩世)と共に、一族を増やすため、家族として普通の人間のように生活しながら旅を続けます。
エドガーはとある街で仲良くなった貿易商の息子アラン・トワイライト(柚香光)に目をつけ、一族に加えようと企みます。
その後、バンパネラだということを知られてしまった家族を次々と失い、ひとりになったエドガーはアランと共に絶えることのない人生を彷徨い続けることに・・・
原作者の萩尾望都さんは、宝塚歌劇での初の舞台化という依頼を快く引き受けたものの、様々なタイミングが合わず実に30年の歳月が経過していたそうです。
そこに明日海りおさんという、エドガーを演じるのにこの上ない役者が登場し、やっとの思いで舞台化が実現したというエピソードも。
制作発表を初めて見た萩尾望都さんは、想像以上の仕上がりに大変感激されたそうです。
『天は赤い河のほとり』
『天は赤い河のほとり』は、1995年に「少女コミック」にて連載がスタートし、絶大な人気を誇る篠原千絵さんによる少女漫画。
宝塚歌劇による初の舞台化として、2018年に本公演にて宙組により上演されました。
脚本・演出は、小柳奈穂子先生です。
紀元前14世紀の古代オリエント・ヒッタイト帝国を舞台に、帝国の皇子と未来からタイムスリップしてきた女子高生との物語。
ヒッタイト帝国の世継ぎと噂される第3皇子のカイル・ムルシリ(真風涼帆)は、ある日突然、未来からタイムスリップしてきた鈴木夕梨/ユーリ(星風まどか)と出会います。
実はユーリを召喚したのは、自分の子供に皇位を継承させようと目論む皇妃ナキア(純矢ちとせ)。
カイルはナキアの陰謀からユーリを守るため、自身の側室として側に置くことにしますが、正義感に溢れるユーリを見ているうちに次第に惹かれるように。
ユーリは民衆の心を掴み、戦いの女神・イシュタルとして崇められるようになります。
カイルはユーリを正妃として迎え、理想とする国創りのために共に歩んで欲しいと伝えます。
そんなカイルの熱い思いを受けたユーリもまた、現代へ戻ることを止めてヒッタイト帝国に残り、カイルと共に生きていくことを決意。
しかし、カイルとユーリの前には様々な障壁が立ちはだかります・・・
ヒロインに次々とアプローチしていく、素敵な皇子たちのかっこよさは必見!
長編作を凝縮した内容になっているため、ダイジェスト版のような感覚で気軽に楽しめる作品となっています。
『花より男子』
『花より男子』は、1992年に「マーガレット」にて連載がスタートし、アニメやテレビドラマ化された神尾葉子さんによる大人気少女漫画。
宝塚歌劇による初の舞台化として、2019年にTBS赤坂ACTシアター公演にて花組により上演されました。
脚本・演出は、野口幸作先生です。
世界的な大財閥の御曹司で俺様キャラの道明寺司(柚香光)と、一般庶民で明るく正義感の強い女の子牧野つくし(城妃美伶)を取り巻くラブコメディ。
裕福なお坊ちゃまやお嬢様が通う名門高校「英徳学園」は、“F4”と呼ばれる4人の美男子に支配されていました。
F4のメンバーは、リーダーの道明寺司、裏社会のボスの跡取り息子でマダムキラーな美作あきら(優波慧)、大会社の跡取り息子でミステリアスな花沢類(聖乃あすか)、日本一の茶道家元の息子でプレイボーイの西門総二郎(希波らいと)。
F4は気に入らない生徒のロッカーに“赤札”と呼ばれるカードを貼り、他の生徒を利用していじめるという遊びをしていました。
学校では目立たないようにと常に身を潜めていたつくしでしたが、ある時、友人をかばったがためにF4の標的となってしまいます。
しかし、持ち前の正義感で立ち向かうつくしに心奪われ、次第に惹かれていく道明寺。
つくしへの想いを不器用に表していく道明寺と、優しくて不思議な魅力を持つ花沢類に惹かれるつくし。
少女漫画王道のキュンとするエピソードが盛りだくさんの中、果たして3人の恋の行方は・・・
テレビドラマにも登場した印象的なシーンを集め、原作にも沿ったストーリーとなっています。
原作やドラマファンはもちろんのこと、人気漫画の舞台化を気軽に楽しみたいという方にもオススメの作品です。
『はいからさんが通る』
『はいからさんが通る』は、1975年に「週刊少女フレンド」にて連載がスタートし、様々な形で実写化されてきた大和和紀さんによる少女漫画の傑作。
宝塚歌劇による初の舞台化として、2017年に別箱公演にて初演、2020年に本公演にて再演となりました。
脚本・演出は、小柳奈穂子先生です。
大正時代の東京を舞台に、繰り広げられる波乱万丈の恋物語。
はいからさんと呼ばれる快活な女学生・花村紅緒(華優希)は、自転車での女学校帰りに男性を避けきれず転倒し、自転車を大破させてしまいます。
その男性とは、陸軍少尉の伊集院忍(柚香光)。
思わず笑ってしまう忍に怒りが収まらない紅緒ですが、忍は3代前から決められていたという許嫁でした。
紅緒は忍の家に花嫁修行に訪れるも、自身の嫁入りを破談にしようと様々なトラブルを起こします。
しかし、ひとつ屋根の下で暮らすうち、二人は互いに惹かれていきました。
ある時、紅緒が起こしたトラブルにより、忍は小倉への転属命令からシベリアへ出兵することに。
その後、忍がシベリアで戦死したという知らせが届きます。
ショックを受ける紅緒でしたが、伊集院家に嫁いだからにはと、忍の代わりに伊集院家を守ることを決意。
職を得ようと青江冬星(瀬戸かずや)が編集長を務める出版社の門を叩き、女性記者として働くことになります。
とある会見に記者として出向いた紅緒は、戦死したはずの忍そっくりの人物と出会うことに・・・
戦争と関東大震災という困難な時代を乗り越え、固い絆で結ばれた二人の恋物語にトキメキが生まれること間違いありません。
『CITY HUNTER -盗まれたXYZ-』
『CITY HUNTER -盗まれたXYZ-』は、北条司さんによる大人気コミック。
1985年に「週刊少年ジャンプ」にて連載がスタートし、アニメの映画化や実写版映画が好評を博しました。
宝塚歌劇による初の舞台化として、2021年に本公演にて雪組により上演されました。
脚本・演出は、齋藤吉正先生。
東京の新宿を舞台に、個性的なキャラクター達の活躍をドラマティックに描くハードボイルドコメディ。
主人公は、スイーパー(始末屋)として生きる冴羽獠(彩風咲奈)。
冴羽獠は、かつての相棒で今は亡き槇村秀幸(綾凰華)の義妹である槇村香(朝月希和)とコンビを組み、正体不明のシティーハンターとして活動しています。
美女からの依頼、または依頼人の想いに“心が震えた時”のみに依頼を請け負うというポリシーの元、同時に2つの依頼を受けることに。
1つは、美人刑事・野上冴子(彩みちる)の依頼で、日本に亡命してきたアフリカ・グジャマラ王国の王女アルマ(夢白あや)のボディーガードを務めること。
アルマ王女にとって獠は、幼い頃に助けられた際に勇気のペンダントを貰ったという初恋の人でした。
もう1つは、女優の宇都宮乙(千風カレン)の依頼で、暴力団の事件に巻き込まれてしまった息子の小林豊(彩海せら)を、自分の保険金をかけて助けて欲しいという依頼。
また、獠がアメリカでスイーパーをしていた時の元パートナー、ミック・エンジェル(朝美絢)が来日したことで、香とのコンビ解消の危機が襲います。
更には、獠の育ての親である海原神(夏美よう)が麻薬密売組織の総帥であることを知り、直接対決することに。
原作が登場した1980年代バブル期の新宿の様子を、看板など細部にまで再現。
アニメのエンディング曲として一世を風靡した、TMネットワークの「Get Wild」が劇中歌として登場しました。
まとめ
宝塚歌劇がマンガを舞台化する上での大きな魅力は、原作に近いビジュアルを体現できること。
さらには、マンガの世界観を壊さず、新たな作品として創ることができるという点です。
宝塚歌劇による舞台化であれば、少年少女マンガとの親和性が高くなるのも必然。
今回は、宝塚ファンの中でも人気のマンガ原作の作品から、初心者でも楽しめる作品をご紹介しました。
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