宝塚歌劇団における《すみれコード》というワードをご存知でしょうか?

耳にしたことはあるけど、“すみれコード”って何のこと?

一言で言えば、宝塚歌劇という夢の世界観を壊さないためのルールです。
《すみれコード》とは、宝塚歌劇団のモットーである「清く正しく美しく」に相応しくないことをしないというルールのこと。
いわゆるテレビやラジオでいう“放送コード”のようなものです。
《すみれコード》を知っておくと、更に夢の世界観にひたり楽しむことができるかと思います。
今回は、《すみれコード》について、初心者の方にも分かりやすく具体例などを用いてご紹介いたします!
すみれコードとは?

はじめに、宝塚歌劇を表す言葉として良く耳にする「清く正しく美しく」とは、宝塚歌劇団の創始者である小林一三さんの教え。
宝塚音楽学校の校訓であり宝塚歌劇のモットーです。
宝塚歌劇のモットーである「清く 正しく 美しく」は、小林一三翁の教え。
“家族ぐるみで安心して楽しめる国民劇”を目指した一三翁が、華やかな夢の舞台を支える歌やダンス、演劇といった芸能の基本はもちろんのこと、礼儀作法やマナーをわきまえ、一人の女性として、社会人としての品格を忘れないようにと贈った言葉です。
その精神は、時代がどんなに移り変わろうとも、すべてのタカラジェンヌ、すべてのスタッフの中に深く息づいています。
引用:https://kageki.hankyu.co.jp/fun/about_takarazuka.html
そして《すみれコード》とは、“「清く正しく美しく」に相応しくないことをしないというルール”のことです。
いわゆるテレビやラジオなどの“放送コード”のようなもの。
宝塚歌劇団の品格を損うような言動、観客の夢を壊すような内容・表現の演出はしないというルールのことです。
ちなみに、すみれは宝塚市の市花で宝塚歌劇団のシンボルとなっています。

《すみれコード》の例としては、生徒の本名・年齢・年収などを公表しないこと。
ただし、宝塚歌劇団から発信されている情報から少し検索すれば分かることもあるため、絶対的なルールというわけではないようです。
作品における演出については、あまりに過激な内容は避けられ、原作の表現を宝塚仕様へ変更されることも多くあります。
《すみれコード》というワードが生徒の口から発せられることはありますが、宝塚音楽学校や劇団内で学ぶ時間があるわけではないようです。
そのため、生徒たち自身が“「清く正しく美しく」に相応しいことかどうか”を考え行動し、受け継がれてきた伝統の1つということになるかと思います。
また、宝塚歌劇公式ホームページの【宝塚用語辞典】にも、《すみれコード》についての記載はありませんでした。

宝塚歌劇の生徒は、“フェアリー(妖精)”と表現されることがあります。
なるべく現実的な情報を避けることで、よりフェアリーのような非現実的な夢の世界の住人のように感じることができます。
つまり《すみれコード》は、絶対的に守らなければならないルールと言うよりは、“宝塚歌劇という夢の世界観を壊さないための演出の1つ”という表現がしっくりくるのではないでしょうか。
夢の世界観を壊さないためには、宝塚歌劇団側だけでなく観客側であるファンもその演出を尊重することで、更に夢の世界観にひたり楽しむことができるのではと思います。
すみれコードの具体例

《すみれコード》の具体例についてご紹介いたします。
具体例の中には、宝塚歌劇団も生徒も決して明かさないものもあれば、正式に発信されている情報や生徒の言動から分かることもあります。
- 本名
- 年齢
- 体重やスリーサイズ
- 年収
- 飲食している姿
- 服装
- 恋愛関係
- 性的な話題
- タバコやお酒
- SNS
- 人事
全体的に現実的な情報であるものが多いように感じますよね。
ファン心から知りたいと思う反面、やはり知らない方が夢の世界の住人であることを感じられるのではないでしょうか。
本名

本名については、宝塚音楽学校の文化祭のパンフレットに本名が掲載されていたり、ニックネームとして本名で呼ばれていることも多々あります。
宝塚音楽学校入学時や卒業時のニュースや新聞記事などに、フルネームが掲載されていることも多く、少し調べれば分かることです。
しかし、宝塚歌劇団に入団後は、あくまでも芸名あってのニックネームとして呼ばれるに留まり、フルネームを公にされることはありません。
その一方で、地方紙の新聞記事などに本名が掲載されることもあるようなので、宝塚歌劇団が提示している絶対的なルールというほどではないようです。
年齢

年齢については、在団中に公表されることはありません。
生徒のプロフィールが掲載されている「宝塚おとめ」や公式ホームページの誕生日欄は月日のみで、生まれた年の記載はありません。
ただし、宝塚音楽学校を受験した年齢や回数・初舞台の年などから、年齢を割り当てることは可能です。
例えば、「中学卒業と同時に挑戦した初めての受験(15歳の年)で合格、20YY年(16歳の年)に宝塚音楽学校へ入学、20YY年(18歳)に○期として宝塚歌劇団へ入団」という情報があれば、逆算して年齢を割り当てることができます。
※もし分かったとしても、自分の中やお友達との会話のみに留め、SNSなどで発信することは控えましょう。
体重やスリーサイズ

体重やスリーサイズについても、公表されていません。
身体的な内容で正式なプロフィールの1つとして公表されるのは、身長のみとなります。
年収

年収についても、公表はされていません。
宝塚歌劇団に在籍する生徒たちは阪急電鉄株式会社の社員であるため、20代の一般会社員と同等ぐらいではないかと言われています。
入団7年目以降はタレント契約に切り替わるため、年収はそれぞれということになるかと思います。
飲食している姿

数年前までは、生徒が飲食している姿をタカラヅカ・スカイ・ステージなどで放送されることはありませんでした。
しかし近年では、食べ物を口に付けるぐらいまでは放送されるようになり、時代に応じて変化しているようです。
服装

服装については、基本的に男役はパンツスタイルのみ、娘役はスカートスタイルが多いようです。
公演やお稽古が無い時であっても、プライベートでファンの方に見られた時に、やはり夢を壊さないためだそう。
その時に演じている役柄によっては、稽古場でのお稽古着として男役がスカートを履いたりレオタードを着たり、娘役がパンツを履いたり、入出の服装を役柄に合わせることもあります。
恋愛関係

宝塚歌劇団は未婚の女性のみが在籍できるため、結婚している方はいません。
恋愛が禁止されているわけではありませんが、やはりファンの夢を壊さないため、プライベートでの自身の恋愛関係を語ることはありません。
性的な話題

作品におけるストーリーや演出上で性的な表現がある場合は別ですが、生徒の口から具体的に語ることは控えられているようです。
タバコやお酒

プライベートでの喫煙について公言されることはありませんが、お酒については、好きなお酒の種類や「強い・弱い」などについてお話されることはあります。
昔は男役が声を低くするためにタバコを吸っていたというエピソードもありましたが、現在では健康や体力を保つために喫煙されている方は少ないのではと思います。
ただ、作品の中で役柄としてタバコを吸う姿はとってもカッコイイですし、お酒をテーマにしたショーもあります。
SNS

宝塚音楽学校や宝塚歌劇団在団中は、インスタグラムやツイッターなどのSNSは禁止されています。
そのため、退団してからSNSをはじめる方がほとんどです。
ただし、最近ではSNSで話題になったトレンドや内容について、終演後の挨拶でお話されることもあります。
はっきりと“エゴサ(エゴサーチ)している”と仰る生徒さんもいらっしゃるので、ファンの発言はいつでも見られていると意識してSNSを利用したいものですよね。
人事

トップスターの就任や退団、組替えなどの人事に関する情報については、《すみれコード》とは言えないかもしれませんが、生徒からの具体的な発言は避けているようです。
そのため、ファンの中で憶測のようなものが生まれることが多々あります。
特に人事関連のお知らせは、嬉しい気持ちや残念な気持ちを共有できるのがSNSの楽しいところですよね。
しかし、特定の生徒さんやそのファンの方たちを傷つけるような言葉を使用していないかどうか、自分自身も確認してから発信するようにしなければと思っています。
すみれコードギリギリって?

宝塚ファンの中で度々話題に上がるのが、「すみれコードギリギリ」というワード。
「すみれコードギリギリ」とは、生徒に関することに対して使用される場合もありますが、主に劇中での濃厚なラブシーンや性的な表現がNGギリギリの演出であるという意味です。
更に過激な演出の場合は、「すみれコードぶっちぎり」などと言われる場合も。
宝塚歌劇で上演される作品については、なるべく過激な内容は避けられ、原作がある作品については宝塚仕様へ変更されることが基本となっています。
演出家がストーリー上どうしても必要だと判断した場合には、表現をダンスや歌に変更されるなどの配慮がされています。
しかし、時代の変化や観劇する人によって受け取る感覚は様々なため、「この演出は宝塚歌劇の作品として相応しくないのでは?」という意見が出ることも。
もちろんすべての公演ではありませんが、公演中または公演される劇場が変わるタイミングなど、公演途中で演出が変更になることもあります。
公演途中で変更された場合、映像として残るのは変更された方となります。
すみれコードギリギリの作品

「すみれコードギリギリ」の作品として良く話題に上がるのは、1985年初演『はばたけ黄金の翼よ』、1999年初演『激情 −ホセとカルメン−』、2009年『薔薇に降る雨』などでしょうか。
最近の例としては、2016年雪組別箱公演『ドン・ジュアン』。
セクシーで女たらしな『ドン・ジュアン』を演じる望海風斗。愛を知ったときの姿がまた見事! 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて7月12日まで上演中。https://t.co/smLlP36LeG #望海風斗 pic.twitter.com/mz61xlWmQN
— Lmaga.jp (@lmaga_jp) July 5, 2016
主人公と母親との近親相姦により母親が自ら死を選ぶという場面から、母親の病死へと変更されました。
KAAT神奈川芸術劇場と梅田芸術劇場との公演の合間に演出が変更になったため、当時はSNSなどで物議を醸しました。
この場面は、主人公の歪んだ人格形成に通ずるであろう衝撃的なエピソードであるため、主人公の内面自体が変わってしまうことにもなりうるという、ストーリーの中でも重要な場面です。
公演途中での変更となったため、既に観劇していた方もこれから観劇予定の方も、動揺を起こしていたようです。
直近では、2021年宙組大劇場公演のショー『デリシュー』の「フォレノワール」の場面。
ショーではこんなシーンも。真風涼帆さん(左)と潤花さん。 pic.twitter.com/wmETlROthE
— ベルちゃん@ニッカン宝塚 (@nstakarazuka) June 26, 2021
この場面は、ブローニュの森の奥にあるレヴュー小屋で繰り広げられる、男女の禁断の愛を表現したという耽美な場面で、一部のポーズが変更になりました。
ブローニュの森はフランスに実在する場所で、夜になると売春婦や薬物中毒者などが集まる場所だそう。
そういったものを題材に描かれた、ミュージカルやショーの場面はわりと多くあるかと思います。
しかし、そのポーズの一部を切り取った写真がSNSで先行して出回ってしまったというのもあり、「下品だ」「子供に見せられない」などという否定的な意見が劇団にも届いたようで、初日からわずか数日後に演出が変更となりました。
その一方で、「パステルカラーの可愛らしいスイーツの世界観の中の、唯一スパイス的な役割を果たしているので問題ない」といった問題視しないという意見も多数ありました。
今回、《すみれコード》についてご紹介するつもりで色々と調べて行くうちに、様々な考えを巡らせてしまいました。
芸術に触れるということは、観客側の人生経験や思考・想像力の幅・現代の感覚への置き換えをするかどうかなどによって受け取り方が異なります。
そのため、観客全員が満足する作品を制作することは不可能であるということが前提です。
芝居による作品においては、リアリティを感じさせるための少々強烈なエピソードを入れることも必要不可欠だとは思います。
少々過激な演出だったとしても、私自身は不快に感じたことはありません。
しかし、宝塚歌劇で上演される作品においては、“「清く正しく美しく」というモットーに基づいているどうか”という観点で制作しなければならないのでは?という疑問もあり、とても難しい問題だと思いました。
全員が女性キャストで男役が男性役を演じるという独自性により、観客側が「男役を本物の男性として観ている」か、女性が男性を演じる「男役というフィルターを通して観ているか」などでも変わって来るのかもしれませんね。
宝塚歌劇で描く性については、特に現代では難しい問題のようです。
時代に応じて変化

最近では特に、ルールや規則は時代に応じて変化させていくものと言われていますが、《すみれコード》についても同様です。
上記の項目【すみれコードの具体例】でも触れましたが、数年前までは放送を避けられていた「生徒が飲食している姿」が近年では放送されるようになるなど、変化を見せている項目もあるようです。
作品においても同様で、宝塚歌劇らしさを継承しつつ、時代に合わせた価値観の変化に応じた挑戦も続けられています。
2018年月組大劇場公演『BADDY −悪党は月からやって来る-』は、座付き演出家である上田久美子先生による“宝塚初の女性演出家によるショー”として大変話題になりました。
19日(土)の23時から『BADDY-悪党は月からやって来る-』(’18年月組・宝塚) を初放送いたします。どうぞお楽しみください!#タカラヅカ・スカイ・ステージ #月組 #珠城りょう #愛希れいか pic.twitter.com/7bHTklCvap
— 【公式】タカラヅカ・スカイ・ステージ (@skystage_info) June 17, 2021
いわゆる“悪者”を主役にし、月から地球へ乗り込んできた大悪党バッディが、つまらない世の中を面白くするために悪事を働くというストーリー仕立てのショーです。
喫煙・飲酒・喧嘩・犯罪などの“わるいこと”による、《すみれコード》という伝統から逸脱させた演出が話題となりました。
ここ数年で常識化されてきた、性差をなくそうという考え方である“ジェンダーレス”のキャラクターも登場させました。
ショーの設定について、演出家の上田久美子先生が下記のように語っています。
あらゆる犯罪が103年間起きていないその国家で、悪党のバッディが自由に振る舞うのを、周りが取り締まろうとし、愛希れいか扮する女捜査官・グッディをはじめ、みんなが彼を追いかけます。
でも、いつしかバッディの自由で型破りな面に惹かれ、彼の魅力に地球の人たちが感化されていきます。
いつとは定めていない未来の話ですが、本当のSFではなく一種現実のパロディのような、社会風刺的要素のあるコメディータッチなショーですね。
引用元:https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2018/company/special_003.html
異色のショーではあるものの、「プロローグ・中詰め・ロケット・黒燕尾・デュエットダンス・フィナーレ・パレード」といった通常の形式は守られているため、あくまでも“宝塚のショー”であるところも面白い要素のひとつです。
宝塚のショー作品をいくつか観た後に、違いを楽しみながら観るとより楽しめるかと思いますので、興味のある方はぜひご覧ください!
まとめ
今回は、《すみれコード》についてご紹介いたしました。
《すみれコード》とは、“「清く正しく美しく」に相応しくないことをしないというルール”のこと。
具体的には、宝塚歌劇団の品格を損うような言動、観客の夢を壊すような内容・表現の演出はしないというルールのことです。
宝塚の生徒は“フェアリー”と表現されることもあり、現実的な情報を避けることで、非現実的な夢の世界の住人のように感じることができます。
ただし、宝塚歌劇団も生徒も決して明かさないものもあれば、正式に発信されている情報や生徒の言動から分かることも。
絶対的に守らなければならないルールと言うよりは、“宝塚歌劇という夢の世界観を壊さないための演出の1つ”と言えるでしょう。
夢の世界観を壊さないためには、宝塚歌劇団側だけでなく観客側であるファンもその演出を尊重することで、更に夢の世界観にひたり楽しむことができるかと思います。
ぜひ《すみれコード》も意識しながら宝塚歌劇を楽しみましょう!

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